オアシス・カフェ〜三人のプリンス〜
暫く睨み合う俺と男。
そして、男は俺の手を振り払うと無言で店を出て行った。
穂花は、へなへなとその場に座り込んだ。
大量の涙が頬を濡らしている。
同情なんてしない、悪いのは全部この女 。
だけど、俺は…なぜだがこいつを見捨てることが出来なかった。
俺は一旦荷物をまとめると、「ほら」と穂花に手を差し伸べた。
俺の手を、濡れた瞳で見つめる穂花。
「とりあえずここは店の邪魔になる」
俺は自分と平井の分の会計を済ませると、荷物と穂花の肩を支えて、店を出た。
今日は8月最終日の夜。
外は暑いわけでもなく、過ごしやすい陽気だ。
俺は、夜は使ってないテラス席に穂花を座らせた。
穂花は華奢な身体を震わせて、過呼吸を起こしそうなぐらい嗚咽を繰り返している。
俺は念のために持ってきていたパーカーを穂花の肩に掛けてやった。