オアシス・カフェ〜三人のプリンス〜
「…卓人はやっぱり優しいね」
穂花はパーカーの端を握り締めながら続けた。
「さっきも助けてくれた。叩かれないように…」
「別に、助けたわけじゃない」
あの男が、あまりにも不憫だったから。
数年前の俺と重ねてただけだ。
「…みんな、私から離れていくのね。遣都も…卓人も…」
穂花は辛そうに唇をギュッと噛み締めると、「…自業自得だよね」と寂しく自嘲するように笑った。
俺が初めて守りたいと思った女は、異常なまでの寂しがり屋で、一人になるのを心底怖がった。
ひとりぼっちは嫌、その言葉を俺は何度聞いたことだろう。
涙を目いっぱいに浮かべて、俺にすがりつくように…
この言葉を聞く度に、当時の俺は、俺が一生そばにいる、こいつを一人にはしないって思ったんだ…