オアシス・カフェ〜三人のプリンス〜

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出会いは、3年前の高3の夏休み。

何匹もの蝉が耳障りなほど鳴きじゃくり、一歩外へ出ると汗がじわりとにじむ真夏日に、俺は赤本を持って図書館で受験勉強をしていた。

入り口から一番遠い隅っこの窓際の席。

ブラインドの隙間から太陽の日差しが入り込む。

勉強を始めて二時間、ひと段落して座りながらぐーっと背伸びをすると、いつの間にか向かいの席に女性が座っているのに気づいた。

肌は白く、華奢で見るからに小柄。

ほんのりと紅い頬、ぷっくら膨らんだ唇、長い睫毛。

一瞬で目を奪われた。

それが、穂花だった。


『あ、ごめんなさい。勉強の邪魔しちゃったかな?』

『…いえ』

『本当は別の席に座れば良かったんだけど、ここ、私のお気に入りの席なの』

『あ、じゃあ俺が移動しますよ』

『いいのいいの!受験生が優先!それより、うちの大学受けるのね』


そう言って、穂花は赤本を指差しながら微笑んだ。


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