オアシス・カフェ〜三人のプリンス〜
『K大なんですか?』
『こう見えてバリバリの現役よ』
にこっと笑う彼女は、同級生とは違う、年上の落ち着いた雰囲気で。
何故だろうか、一緒にいても嫌じゃなかった。
もともと女はうるさいしすぐ泣くから嫌いだったけど、彼女だけは違ったんだ。
それから、穂花は暇さえあれば勉強を教えてくれてた。
俺は、穏やかで優しくて、華のような穂花に、どんどん惹かれていった。
そして、夏休み最終日。
俺たちはひと気の少ない、本棚と本棚の間で、キスをした。
夕日が窓から差し込んで、オレンジ色に染まった図書館内。
キスの後、照れたように微笑んだ穂花が、たまらなく愛しいと思った。
全部が初めてだった。
世間がクリスマスムードになりつつある12月上旬。
受験の追い込みでなかなか穂花と会えない日が続いた。
寂しくないと言ったら嘘になる。
でも会いたいなんて、当時の俺は恥ずかしくて自分からは言えなかった。
穂花に会いたい、柔らかい感触と甘い匂い、華のような笑顔で癒されたい。
それほど、受験勉強で追い詰められていた。