オアシス・カフェ〜三人のプリンス〜
ある日の予備校の帰り。
『あ、穂花…?』
俺は驚きのあまり、持っていたスクール鞄をその場に落とした。
穂花が俺の目の前で、別の男の車に乗るとこを見たんだ。
男は穂花より年上で、スーツを着てたから社会人だろう。
仲睦まじ気に笑い合っていた。
男が助手席のドアを開けてやると、穂花は何のためらいもなく乗り込み、車が発進する前に触れるだけのキスを交わした。
そして、2人が乗った車は俺に気付くことなく夜の街へ消えて行った。
次の日、予備校の前で内緒で待ち伏せしてた穂花に、俺は問い詰めた。
寒空の下、待っててくれて、いつもなら嬉しいはずなのに、その日は怒りしかなかった。
『違うの!あの人は従兄弟なの!』
『穂花は従兄弟とでもキスすんのかよ⁈』
『あの人は海外から帰って来たばかりで…向こうのくせがぬけないのよ』
そんな言い訳、通じると思ってるんだろうか。
誰がそんな話、信じると思う?
だけど…
『信じて…私にはあなただけなの』
コートの裾をギュッと掴み、目には涙を浮かべて辛そうに言う穂花を、一度だけ信じてみてもいいかなと思った。