オアシス・カフェ〜三人のプリンス〜
「…もう、助けてはくれないのね」
そう言うと、突然、穂花は俺の首に手を回すようにして抱き付いてきた。
「おい!」
「お願い…これで最後にするから…」
震える穂花の小さな身体。
一度は守りたいと、一度は愛しいと思った女なのに…
「悪い…」
俺は首に回る穂花の腕を強引に解いた。
慰めでも、俺はこいつを抱き締めてやれない。
俺がこの腕に抱きたいのは、ただ一人。
「…もしかして、あの子のこと好きなの?」
「あの子?」
「ここで働いてる子よ」
「…穂花には関係ない」
「ひどい言いようね。一度は愛し合った仲なのに…」
穂花は羽織ったままの俺のパーカーを俺の胸に突き返すと、「もういい!一人で帰る」と暗い路地道に消えて行った。
一瞬、唇を噛み締めて、悔しそうな表情をした穂花のことが気になりつつも、俺は一旦店に戻った。