オアシス・カフェ〜三人のプリンス〜
ピンポーン。
平井の家に着き、インターホンを鳴らすと、すぐに平井のお母さんが玄関から顔を覗かせた。
「はじめまして。柚姫さんと同じバイト先で働いてる槙村といいます。柚姫さんがバイト先に鞄を忘れていったので、届けに来ました。柚姫さんはいらっしゃいますか?」
「あら、わざわざどうもありがとう。ごめんなさいね。あの子、帰って来てすぐに寝ちゃったみたいなの」
お母さんはそう言いながら、門の所まで出て来てくれた。
とりあえず、無事に帰ってたみたいだな。
「じゃあこれ、渡して下さい」と、俺は門越しに平井の鞄を渡した。
「ありがとう。これからもハルと柚姫のこと、宜しくね」
「はい、こちらこそ。では、俺はこれで失礼します」
俺が会釈をすると、お母さんは「気を付けて帰ってね」と穏やかに微笑んだ。
お母さんが家に入ったのを確認すると、念のためにハルさんに電話した。
ハルさんが安心してホッと息を吐いたのが、電話越しでもわかった。
ハルさんの気持ち、俺にもわかる。
あいつは放っておけないっつうか、危なっかしいっつうか…
だから側に置いときたくなるんだよな。