オアシス・カフェ〜三人のプリンス〜
「俺、本気なんだけど?」
「…ほん、き…?」
何も考えられなかった。
カァッと頭に血が上って、気が付くと、
「邪魔」
俺はドアに凭れかかり、二人を睨み付けていた。
なんでそんな簡単に、男に触らせてんだよ。
お前には警戒心って物がないのか?
平井の表情からは、恐怖の色が見て取れる。
こいつがバイトに入って来た時は、俺の前ではいつもこの顔だった。
最近は怖がらなくなったけど、やっぱこいつにとって俺はただの怖いバイトの先輩ってところか。
「もう卓人さん、空気読んでくださいよ。今いいとこだったんですから」
蒼は相変わらずで、気にした素振りはない。それどころか、
「柚姫ちゃん、今日一緒に帰ろ?さっきの話の続きしたい」
なんて、いう始末。
まさか、行くなんて言わねぇよな?
蒼はいい奴だけど、二人っきりになったら何されるかわかったもんじゃない。
現に、さっきだってキスされそうになってただろ?
平井の返事が気になりつつも、俺は平然を装って制服に着替え始めた。
「…いいよ。一緒に帰ろ」
は?今、いいって言った?
嘘だろ?
またキスされそうになっても知らねぇぞ?
俺は、それ以上二人の会話を聞いていたくなくて、平井を見ることなくスタッフルームを出て行った。