オアシス・カフェ〜三人のプリンス〜

「お疲れのところ引き止めてごめんなさい。ありがとうございました」

女性は蒼君の姿を見た途端、そう言って「私はこれで…」と帰って行った。



「…今の、知ってる人?」


私の隣まで来た蒼君が、女性の後ろ姿を眉間に皺を寄せて見ながら言った。


「ううん。知らない人だよ。どうやら卓人さんを待ってたみたい」

「え…?卓人さんを?」


そう言って、目を丸くした蒼君。


「うん…それがどうかした?」

「……いや。何でもない」


蒼君は何かを考えてるように、女性が歩いて行った方をじっと見つめ黙り込んでいる。

何でもないって感じじゃないけど…

なんとなく、触れちゃいけない気がする…


「残業終わったの?」


いつもとは違う異様な空気に耐えきれなくなった私が話を変えると、


「うん。ダッシュで終わらせた!急げばユズキちゃんに追い付けるかと思って。柄にもなく頑張っちゃったよ」


蒼君はそう言って、ニコッと白い歯を見せて笑った。




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