オアシス・カフェ〜三人のプリンス〜
さっきまでとは打って変わって、心臓がドクンドクンと嫌な音を鳴らす。
あまりにも衝撃的過ぎて、頭をガツンと殴られたように目の前が真っ白になった。
冗談であってほしい…
だけど、照れてる遣都さんを見ると、嘘でも冗談でもなく本当のことなんだと思い知らされる。
これって…失恋したってこと…?
好きって気付いたばかりなのに?
想いもまだ伝えてないのに…?
「ーー…柚姫?」
「…へ?」
ハルちゃんの声にハッと我に返ると、心配そうな面持ちの遣都さんとバチッと目が合った。
「柚姫も見たいわよね?遣都の婚約者!」
「う、うん。見てみたいな。きっと素敵な女性に違いないけど」
咄嗟に視線を逸らし、平然を装う。
遣都さんの顔を見る勇気がない。
きっと、今は引きつって上手く笑えそうにないから…
「あ…もうすぐおしぼり無くなる!私、補充するね」
そう言って、私は【スタッフオンリー】と書かれたドアを開け、スタッフルームの隣りにある備品室に逃げ込んだ。
窓はなく、大きな棚に幾つものダンボールが置かれただけの備品室。
ちゃんと閉まり切ってないドアの隙間から明かりが漏れて、やや薄暗い。