オアシス・カフェ〜三人のプリンス〜
備品室にまるで私がいないかのように、何も話さず、見ようとすらしない卓人さん。
き…気まずい…
そう感じてるのは、恐らく私だけだと思うけど。
とにかく何か会話を…
「あ、あの…おしぼりは私がーー…」
「別に言わないから」
「…へ?」
言わない?
って、何を…?
「これは俺がやるから。ここの整理でもやってろ」
いつものように無愛想な卓人さんは、そう言って、おしぼりを持って備品室から出て行った。
ここの整理って言われても…
いつもきちんと整理整頓された備品室。
掃除だって毎朝やってるし。
特に今、やる必要なんてないんじゃ…
ぐるっと備品室を見渡すと、ドア横の壁に掛けられた鏡が目に入った。
「あ……」
鏡に映るのは、目が赤くなった自分の姿。
頬には一筋の涙の跡が残り、睫毛はやや濡れている。