オアシス・カフェ〜三人のプリンス〜
カウンター内にいたハルちゃんと並木さんに挨拶をし、店を出る。
「卓人さん、待ってください!」
店の横にある自販機で珈琲を買っていた卓人さんは、私の声に気付くと、怪訝そうな顔で振り向いた。
「さっきはありがとうございました。私が泣いてたから、備品室の整理でもしてろって言ったんですよね?」
「……」
「泣いてた私の変わりにおしぼりを出してくれたのも、誰にも言わないでいてくれたのも。その優しさが本当に嬉しかったんです。だから…」
「…別にそんなんじゃねぇよ。あんな顔で表出られても迷惑なだけだし。絶対ハルさんも煩くなるだろうし」
ズキッ…
やっぱり、そうだよね…
私のためじゃない。そんなのわかってた…
「でも…それでも、嬉しかったんで…」
なのに、何でかな…
胸が痛い……
「本当にありがとうございました」
そう言って、目を逸らすように頭を下げた。
自分でもよくわからないけど、そのまま目を合わせていられなかった。