オアシス・カフェ〜三人のプリンス〜
気まずい空気が漂う。
女性をちらっと見ると、涙を目一杯溜めて唇を噛み締めながら、卓人さんの小さくなる背中を見つめている。
ゔう…どうしよう……
このまま何も言わずに、泣いてる女性を放って帰るわけにはいかない…よね…?
「あ、あのぉ…これ…」
私は鞄からハンカチタオルを取り出し、女性に差し出した。
女性は「…ありがとう」と涙声で言うと、ハンカチで目元を拭った。
それにしても、あんな風に声を荒げて感情剥き出しの卓人さんは初めて見た。
今まで、しつこいお客さんにイライラしてるところを何度も見たけど。
さっきの卓人さんは、第三者の私まで身震いしそうなほど怖くて。
…別人みたいだった。
ただの喧嘩じゃなさそうだよね…
目の前で鼻を啜る女性を見てると、何故だか私まで悲しくなった。
「…ごめんなさいね。変なところ見せて」
「いえ…」
ややして、涙が止まった女性は「これ、洗って返すわね」と笑みを浮かべた。
あんな風に怒鳴られた後じゃ当然だけど、元気のない無理した笑顔で。