オアシス・カフェ〜三人のプリンス〜
蒼君は何を言ってるの…?
さっきまで、別の女の人とキスしてたじゃない。
俺も好きだよって…そう言ってたよね?
なのに何で私を誘うの…?
「……」
「ねえってば」
何も答えない私に焦れたのか、蒼君は私の手首をギュッと掴んだ。
「離して!」
その瞬間、私は蒼君の手を思いっきり振り払い、一歩距離を置く。
「え……柚姫ちゃん…?」
「わたし……私、」
蒼君の可愛らしい子犬のような笑顔や仕事中の凛々しい顔が、頭に浮かんではガラガラと崩れていく。
「ーー…私っ…あなたみたいな人…大嫌い」
蒼君を否定する私の言葉が、静かな廊下に響く。
私はその場にいたくなくて、
早く蒼君から離れたくて、
世界地図を握り締め、全速力で廊下を走った。
蒼君が、私の背中を切なく辛そうな表情で見つめていたとも知らずに。