オアシス・カフェ〜三人のプリンス〜
その日は結局、蒼君と仕事の会話以外に何も話さないままバイトを終えた。
スタッフルームには卓人さんと蒼君、それと私だけ。
いつもは蒼君が一方的に話して騒がしいのに、今日は嘘のように静かで。
苦しい……心が。
「じゃあ、お疲れっす」
「あ……蒼くーー…」
ーーーバタン。
咄嗟に呼び止めようとしたけど、蒼君は振り向きもせずスタッフルームから出て行った。
やっぱり…昨日のことで蒼君を凄く傷付けちゃったんだ…
もう、私には笑ってくれないのかもしれない。
“一緒にかーえろ!”って、待ってても追いかけてもくれないかもしれない。
「はぁ」とため息を吐き、カバンをロッカーから出そうと振り返ると、卓人さんと目が合った。
いつも通り、感情の読み取れない漆黒の瞳。
「あはは…嫌われちゃいました…」
「…何があったか知らねぇけど、俺の前で泣くな」
そういって、卓人さんは私から目を逸らし、ガチャンとロッカーを閉めた。
「な、泣いてなんか…いません」
今にも溢れそうな涙を必死で飲み込む。