オアシス・カフェ〜三人のプリンス〜
「あの…この前のバイトの子だよね?」
振り返ると、名刺の女性ーー、
澤村穂花さんが笑顔で駆け寄ってくるところだった。
「あ…はい。そうです」
「会えて良かった。これ、この前借りたタオル。返そうと思って待ってたの。その節はどうもありがとう」
「いえ、そんな」
「ところで、この前の名刺、卓人に渡してくれた?」
「…それが」
どうしよう…
卓人さんに破って捨てられたなんて言えないし…
「…もしかして、まだ渡してないの?」
そう言って、眉を顰める澤村さん。
「はぁ……全く…使えない子ね」
「ーー…っ…」
私の耳に届くか届かないかぐらい小さな声。
だけど、私にははっきりと聞こえて。
イメージしてた澤村さんとは全くの別人振りに、思わず息を呑んだ。
「俺が破いて捨てたんだよ」
「卓人!」
タイミング良く現れた卓人さんに、澤村さんは一瞬でパァッと華やかな笑みを浮かべた。
そんな澤村さんを、ただ呆然と見つめる。
さっきのは、本当に澤村さんだったの…?
卓人さんに笑顔を向ける彼女を見てると、幻を見ていたんじゃないかとさえ思ってしまう。