オアシス・カフェ〜三人のプリンス〜
あっちから聞こえたよね…
怒声は、今もすぐ目の前にある十字路を右に曲がった所から聞こえる。
心臓が激しく音を立てる中、恐る恐る影から右方向を覗くと、数メートル先で数人の若い男達が一人を囲っていた。
うわぁ…喧嘩だよね、これ…
どうしよう、警察に連絡した方がいいかな…
携帯を鞄から取り出し、ロックを解除しようとするも、焦りすぎてロック番号を間違えてしまう。
ああ、もう!こんな時に!
「てめぇ!二度とデカイ面出来ねぇようにしてやろうか⁉︎」
「…ふっ……やれるもんなら…やってみろよ…」
もう一度ロック番号を入力しようとしていると、聞き覚えのある声にピクッと指を止めた。
今の声……もしかして…‼︎
ハッと顔を上げ、よく目を凝らす。
やっぱり!蒼君だ‼︎
蒼君は三人に囲まれて、シャッターを背に座り込んでいる。
痛みからか顔が歪み、口の端から少量ではあるが血が流れ、見るからに痛々しい姿で。