オアシス・カフェ〜三人のプリンス〜

「…泣いてんじゃん。俺なんかのために…」


そう呟いて、蒼君はふっと笑みを浮かべた。

「…つっ…」と痛みに顔を歪めながら、ゆっくりと体を起こす。

手を貸すと、今度は振り払われることなくそれを受け入れてくれた。

それだけで、凄く嬉しくて…

更に涙が溢れてくる。


「柚姫ちゃん…俺、もうちゃんとする。バイトも休まないし女の子とも遊ばない。だから俺のこと嫌いにならないでよ」

「バカ…」

「バカは柚姫ちゃんだよ…こんな俺のために危険を冒して。お巡りさんって叫んだの柚姫ちゃんだろ?あれ、演技だってバレバレだから…あいつらにもバレてたら柚姫ちゃんもただじゃ済まなかった」

「だって、無意識だったんだもん…蒼君が殴られるって思ったら居ても立ってもいられなくて…咄嗟に叫んでた」


すると、蒼君は私の頬にそっと触れて、


「ありがとう…柚姫ちゃん」


と、柔らかな笑みを浮かべた。



< 93 / 251 >

この作品をシェア

pagetop