君と図書室で

 何だろう?

 真面目な顔をして、ちょっと困って…悩んでるように見える。

 きっと、大地君にとって大切な話なんだ。



「オレさ、小学校の時野球してたって言ったじゃん?」

「うん」

「でもさ…頑張りすぎて肩、壊しちゃったんだ」

「えっ!?」



 …やっぱり聞いちゃいけないこと聞いてた。




「だから肩を使わないサッカー始めたの。それで、野球と向き合うことから逃げてたんだ」

「・・・・」

「でも、好きだったものから目をそらすのは辛くて…。でも思い出してまた傷つくのは嫌だったから、結局逃げたままだったんだ」


 切なげな瞳で右肩を抑える大地君を見てると…

 こっちまで苦しくなる。

 きっと、私にはわからないほど苦しかったんだ…。



「でもさ、この本読んだら少しずつ野球と向き合える気がしたんだ」

「…うん」

「ありがと、由佳ちゃん」

「…うんっ!」


 
 気のせいかもしれないけれど…

 大地君の目に前よりも強い光が宿ったように見える。




 困ったなぁ…

 これ以上好きになっちゃいけないのに、また惹かれそう。
 
 







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