はやくだきしめて
出会ったときは

1 しゅーとっ


「涼ちゃんっっ」




おどろいて後ろを振り向くとそのには女の子がくっついていた。間違いにきづいていないのか俺のシャツをつかんですりすりと頬をすりつけている。


「涼ちゃん、バスケよせてっ」


俺のことを涼ちゃんとよんでいるが、名前のどこにもりょう、は入っていないし、この女の子に見覚えがあるわけでもなかった。


「え、ありえないから?」




「えっ?」

どうやらありえない、と口に出してしまったらしい。その子は頬のすりすりを一瞬とめた。


「俺、涼ちゃんじゃねえけど」


そういってしばらくすると理解できたのか、シャツからぱっと手を離した。


「すみませっわたし、まちがっ」


女の子はおどおどしながらへへっと笑った。チェックのプリーツスカートと一緒に、栗色の髪が風に揺れる。普段は運動なんてしていないのか、顔や手脚はまっしろで細かった。


「涼ちゃんって?」

「東雲 涼夏っていう…」


しののめ りょうか。女みたいな名前だけど男…らしい。


「あ、あいつか……」


よく考えてみると、同じバスケ部の後輩にそんな名前のやつがいた気がする。えらい美人な後輩(男)が入部してきた、とおんなじクラスのやつが話していた。

「え?ほん「きよおおおおおおおお!!!!」

「あっ」

きよおおお、とよばれた女の子の後ろにはバスケでつかっていたボールが飛んできていた。うしろのボールにはきづいていないらしく小首をかしげたままきょとんとしている。

「だから、うしろっ」

自分の方に引き寄せようと彼女の肩に手を伸ばす。



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