結婚の賞味期限 人生の消費期限【完】

その日の終わりに

引き戻される記憶

全てを終え、スタッフがいなくなった控室。

夢のようなひと時はあっという間に終わる。

もう一度最後にと思い鏡の前に座り、１人自分自身を見つめていると、

またドレッサーの前にカードを見つけた…


どこまでサプライズなんだろう。

クスッと微笑みながら、私はさっきとは違う２枚目のカードを開く。

「……」

見た瞬間で、それは私から言葉を奪う…


でも今度の意味は、先ほどとは全く違い…

眉間に深くしわが寄る。

私は目を見開き血の気が頭からすーっと引いていくのを感じた。


なんで…

どうして…


『ひな。今までも、今でも、これからもずっとずっと…

愛している』


そこに書かれた文字は明らかに先ほどとは違って、

線の太い力強い文字だった。

右側が少し上がる癖のある文字…

それは以前はよく目にしていた字。

仕事中に段取りを詳細に書いたメモや手書きの書類でよく見た…


止まったまま凍りつく思考を、

なんとか無理やりに回しながら辺りをきょろきょろと見回す。


いまさら…

何なの？

心臓の鼓動が一気に加速していく。それは見えない物への恐怖心からで、

生まれ変わったはずの私の心に、

自分の犯した過ちという暗闇をあっという間に引き戻した。

それと同時に…

携帯が…

タイミングを見計らったようにブルっと震えた。