結婚の賞味期限 人生の消費期限【完】
私はその紙を掌でギュッと硬く握りしめた。

掌の中で握りつぶしてどんなに小さく形を変えても…

その紙はなくなりはしなかった。

それはまるで私の犯した罪のよう…


その紙を捨てても、消えてなくならないのと同じで

私の今までにやってきたことは永遠に消えない。


あの人が私に触れるその感触は、まだこの肌から完全には消えていない。

彼が教えてくれた感じる所は、今でも変わっていない。

ただ触れるその掌が、指先の感触が変わっただけ…

そこを触られて気持ちいいことを教えたのがあの人だということを、

私の頭と躰はまだ忘れきれていない。


そして、握りしめたまま私はしばらく椅子に座り続けた。

それ忌まわしい遺物をゴミ箱に捨てるのさえ…

ためらわれた。

それはそのカードが大事だからという意味ではなく、

それが、私の罪が、誰かの目に曝され触れたらと思うことに

怯えているからで…


今まで積み上げてきた家族の幸せが、こんな紙切れ1枚のせいで

台無しになってしまうかもしれないなんて…

許せなかった。


これは私自身の闇との闘い。

誰も介入できないし、誰にも助けは求められない。

今自分が何を欲していて、何を求めているのか、

それを忘れてはいけない。

付けられた傷跡はなかなか癒えなくとも…

それに振り回されてはいけない。
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