結婚の賞味期限 人生の消費期限【完】

何もかも

二人が文字どおり一つになり、

何もかも全てが意識の中からひととき消え去る。

そこには、彼と私しかいない…

私すらいるかどうか、定かではない…

彼の存在を強く全身に刻み付けられる。

そんな何かにしがみつかないと、

どこかに消し飛ばされてしまいそうな意識を手繰り寄せ、

お互いが行きつくところまで上り詰め、どろどろになって溶けあい、

強く抱き合ったまま果てていく…


最初ほとんど何も知らない彼に私が教えたはずなのに…

この頃は逆にこちらが翻弄されっぱなしだ。

身も心も魂ですら明け渡して、自らの持てる全てを惜しげもなく捧げつくし、

その褒美として突き抜けるような快楽を享受する。

みずき君とのそれは…

私のすべてを壊した。


理性も、既成概念も、罪悪感も、何もかもすべて…

彼に抱かれるたびに私は新しい私に生まれ変わる。

真っ白になった視界と、感じたことのない快感。

最初、これが本当に同じものなのかと思った。

今まで経験したこととは全く違う…

私の知らない世界。

その世界から戻った時、それ以前と周りを感じる感覚が変わる。

愛されることの幸せをこの身に受ける。

この年になってこんなことを知るなんて…

罪を隠しながら、私はこの人を、この幸せを手放すことなんて…

もうできない。
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