結婚の賞味期限 人生の消費期限【完】
彼と交わると、古く醜い抜け殻をバラバラにされ、

生まれ変わったと思うのに…

それでも奥底のドロドロしたおぞましい感情や記憶までは

完全には消えてなくならない。


あの人との記憶はすべてなくなってはくれなかった。

長い間の片思い。

想いが叶ったと思った瞬間セフレになることを選ぶしかなかった時の切なさ…

それでも気持ちを受け止めてもらえることの喜びと、

忘れるほど放置された躰に初めての快感を刻まれた…

そんな時間がもう少しだけ続いて…

と祈るように思っていた頃、奥様にばれてしまい、

別れようと思ったのに、あの人に

「お金をもらうだけの契約をする愛人になれ」と言われた…

その時に壊れた何かは今も、元に戻ることはない。


だから私はみずき君にすがりつく。

ただ私だけを愛してと叫びたくなる時がある。

気が狂ったように、愛に飢え、ただ私のためだけの愛を欲する。


一瞬消し飛んだ時、その全てを手放したはずなのに、その快感が半端ない分、

ふと気が付いたら、それは私のそこに確かにまだある…


どんな浄化でも、どんな快感を与えられ何もかも全てを捨て去ろうとしても、

決してなくなることのないその暗闇…

これからも私はそれを抱えて生きていく。
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