結婚の賞味期限 人生の消費期限【完】

変化の兆し

「佐々木が来たら口説いてるって勘違いされて殺されるな」

課長はわざと不敵な笑みを浮かべながらキョロキョロする。

「そんなことないですよ~」

私は声をあげて笑った。誰もいないからこその冗談。


だって、課長には長い間恋人すらいなくて、

もしやそっちの人か?とのもっぱらの噂だったから…


「まあ、佐々木と一緒になってそれくらいいい女になったぞぉ~って

言いたかっただけ。俺にはそんなことはどうでもよくて興味ないけど…

そうだ、田川さんが朝一に迎えに来るって言ってたから…」


そう言って薄いコーヒーを持って反対の掌をひらひらとさせながら

どこかに消えていった。


それから同僚もほとんど出勤した頃、

田川課長が「相良君いい?」と私を呼びに来た。

ひとまず自分のやっていた仕事を切り上げ、課長についていく。


1課の入るとまずみずき君のデスクを見る自分に気が付き、

みずき君もこっちを見て微笑んでくれ妙に恥ずかしかった。


課長はそのまま奥の自分のデスクに向かった。

その視線の先には、ほっそりとした背の高い女性がこっちを見て立っていた。


「集まってくれ。今日は新入りがいるから、紹介する」


田川課長のデスクに、課の人間が集まってくる。

全員が集まったところで、女性は頭を下げあいさつを始めた。

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