結婚の賞味期限 人生の消費期限【完】
「初めまして。大野萌愛(おおのもえ)です。

未熟者ですがよろしくお願いします」

まだ若い。彼女はとても緊張しているように見えた。

「まずは俺から自己紹介。課長の田川だ」

まず課長が口火を切る。

「佐々木です」

次にみずき君が微笑みながら彼女の方に頭を下げる。

「湊(みなと)です。お久しぶりです」

その言葉は知り合いなのかなと感じさせる口調だった。

「お久しぶりです」

その他数人が自己紹介した。


そして、男性全員の紹介が終わった後に、隣の田川課長が私の背中を押した。

私の番なのだろう…

「そして、これは隣の課の相良君」

「相良です。こちらがご迷惑をかけることも多いかと思いますが、

よろしくお願いします」

「基本隣の課と仕事は同じことをやっているので、

同じ女性同士色々聞くといい。相良君よろしく」

「はい」

そういうことか…

「じゃ、解散」

田川課長の言葉で男性の同僚はそれぞれのデスクに戻る。

私は柔らかく微笑んで

「大野さん。まずは、湯沸し室から案内するね」

彼女を目で招き、社内を案内した。

この支社では電話や来客の応対、

雑用を基本的に女性がしていることを話したが、

嫌な顔はされなかった。

たぶんそれを私に話して欲しくて田川課長に呼ばれたと思ったので、

そのことだけはきっちりと伝えようと思った。
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