キライノカケラ
気が重かったけど 次の夜の通夜に参列した。


小さな会場には甘いケーキの香りが漂っていて
思わずアタシは生唾を飲んだ。


花の笑顔の遺影が胸に突き刺さる。


あの子ってこんな風に笑う子だったのかな・・・・・って


遺影の周りは可愛い花で飾られていて
香りのいい 美味しそうなスイーツがたくさん置かれている。


まるでオシャレなケーキ屋さんの
ディスプレイのようで・・・・・・・


「千尋 来てくれたかい」

千尋を抱きしめる男の人は 花の父親だった。


「哀しい想いさせて申し訳ない」


千尋の背中が震えていた。


「ごめんな 千尋・・・・」


知らない家族との絆を見せつけられて
こんなところまで 距離を感じてしまった。


「千尋くん ありがとうね・・・・
こんな素敵な写真たくさん撮ってくれてて
遺影決めるのを悩んだくらいよ」


遺影を指さして 花によく似た女の人が
腫らした目を細くして微笑んだ。
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