キライノカケラ
静かに眠る想い
「愛してる……」

荒い息の間に囁かれる言葉


「今日子……」


アタシは答えない…………



タバコの匂い
広い背中


アタシはその後ろ姿を見ている。



愛してるなんて言葉は 簡単に吐けるものなのだ。


この人には 家庭がある・・・・・・


アタシを抱きたいために使う 挨拶みたいなもの


軽い言葉に成り下がる



この言葉が言えなくて アタシは初恋を封印したのに



「帰るんでしょ?」


広い背中に声をかける。



「ああ」



さっきまで執拗に愛を囁いていた男が 現実に戻って行く


部屋の中には 紫色に見える煙が立ち上っている


「じゃあね」


アタシはその背中に背を向けて ベットにもぐりこんだ。
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