キライノカケラ
大きく息をして 店のドアを開けた。


「いらっしゃいませ」


花の母親が 前の客の相手をしながら
そう声をかけた。


アタシの知ってる花は暗くて無表情で 
この明るい母親からは想像もできない子だったけど


店の中をぐるっと見渡す。


クリスマスに飾られた店内


「店 閉めちゃうんですか?」
前の客の声に 足を止めた。


「今年最後のクリスマスケーキになると思うの。」

「おじさん具合悪いんですか?」

「もう 年だから・・・・・
今年も手伝ってもらいながら何とかね……」


寂しそうな声


「おじさんの味 続けて欲しい
ここのケーキ みんな大好きだから」


「そう言ってもらって・・・・だけどね・・・
うん・・・・どうなることやら・・・・・
はい 商品ね。」


「店どうなるか 連絡くださいね」


「お葉書でお知らせするわ」


前の客を玄関まで見送って 母親は寂しそうにため息をついた。
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