キライノカケラ
「お待たせ」

席の横に立った千尋は ダウンジャケットに
真っ白なマフラーを巻いて ニット帽をかぶっている。


「可愛い」
思わず声に出たアタシ

「可愛いか?」千尋が笑う


「私服姿って高校以来だもんね
前はそんなオシャレでもなかったけどね~」

慌ててわざと意地悪っぽく千尋に言うと


「キョンタだって男か女かわかんなかったけど
今は女ってわかるようになった」


「え~~何それ~~」


立ち上がって千尋にパンチしたら


「いたた~~~」
大げさにお腹をかかえる。



昔のアタシたちにタイムスリップしたみたいで
すごく幸せな気持ちになった。


そのまま絵本を片付けに行こうとしたら
千尋がその絵本を静かにアタシからとった。



「あ これって・・・・・」


「可愛い絵本だよね 何かすごい癒されたわ」


千尋が絵本をパラパラとめくって
少し悲しそうな表情になった。
< 157 / 204 >

この作品をシェア

pagetop