キライノカケラ
千尋に一番知られたくなかった。


「私には彼しかいないんです・・・・・。
お腹の子を不幸にしないでください!!」


アタシは千尋がどんな顔をしているのか怖くて見られなかった。


「大丈夫ですか?お腹の子によくないから」

千尋が静かに飯田の妻を抱き起す。


「あなたは……若くて綺麗だし
飯田じゃなくたってこれからもたくさん恋ができるでしょ?」


飯田の妻はアタシをまっすぐに見た。
その目から次から次へと 涙が零れ落ちていた。


申し訳なさで胸が締め付けられる。


飯田の妻の横で 千尋もアタシを見ている。



お願い千尋・・・・・
そんな目でアタシを見ないでよ・・・・・



「お願いします 夫をかえしてください
ずっと夫がおかしいのはわかってたの 頭が
おかしくなりそうだった……でも怖くて問い詰められなくて……」


アタシは自分勝手に人を苦しめていたって
やっとわかった気がした。
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