キライノカケラ
「来てくださったんですね」


店の周りは 華やかな花で飾られていた。


「オープンおめでとう」


花の母親が 車いすを押して近づいてきた。


「おじさん おばさん ありがとうございます」


花の父親はただただ何度もうなずいて 顔をくしゃくしゃにした。


「千尋は?」


「今取材で・・・・・」


「なんて言ったって イケメンパティシエだもんね」


「そうみたいですね」


「若い女の子にキャーキャー言われて
キョンちゃん泣かせたら許さないわよって言っておくわ」


「いえいえそれも宣伝ですから」


「あら頼もしいわね 奥さん」


「これからはどんどんお客さん増えるように
頑張ってもらわないと~」


花の父親が 不自由な手でパチパチと拍手した。


「結婚しても名前が変わらないっていうのが
またいいわね」


「そうですね」


真っ青な空が眩しい・・・・・・・。
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