キライノカケラ
玄関を開けて飛び込んできたのは 大きな千尋の靴の横に
並べられた小さな靴だった。


心臓が鳴った。


アタシはすごくいやな気持になって
わざとに音を立ててリビングに入って行った。


リビングには誰もいなかった。



千尋の隣の靴が 花だってことはわかっている。



千尋の部屋か……



悲しくなった
アタシだけの千尋の空間を 花に侵されたようで
それを認めた千尋の 鈍感さにも 



傷ついた。



制服を着替えに行きたかったけど
いつもの階段は 見えないバリアが張られていて
踏み込んではいけないような気がした。


どうして ここに花を連れてきたの?


ここはアタシたちだけの場所なのに……
身の置き場のないアタシは

ソファーに腰掛けるしかできなかった。
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