腕時計
「じゃあ、行くか」
俊弥と並んで歩く人の多い街。
私より背の高い俊弥。
ガッチリとした肩や大きな背中。
ゴツゴツした指に、笑った時に出来る目じりのしわ。
そんな俊弥と並んで歩く私は、きっと傍から見れば彼女のように見えるだろう。
休日の昼間に、慣れたように会話をし、隣を歩いているのだから。
けれど、私たちはそんな仲じゃない。
彼女どころか、ただの友達でしかない。
中学も高校も大学も。
ずっと一緒だった、ただの友達。
腐れ縁とも言う二人の間柄。
俊弥は少しも気付いてなどいないけれど、私は彼をずっと好きだった。