腕時計
二人でデートのように街を歩く午後は、嬉しいけれど、嬉しくない……。
複雑な心境。
だって、今日は――――。
「悪いな」
少しも悪いと思っていない顔で、そんな事を私に言う。
「珠樹、センスいいからさ」
そう言いながら連れて行かれるアクセサリー売り場。
なんでこんな所に連れて来られたかと言えば、最近出来たばかりの彼女せい。
その彼女の誕生日が近くて慌てた俊弥が、プレゼント選びに私を連れ出したというわけ。
事細かく、彼女の容姿や性格を説明され、プレゼントを選んでる私って本当に間抜け。
なのに、俊弥の頼みだから。なんて考えると結局真剣になって選んでいる。
自分だったら、これがいいなんて言葉も呑み込み選ぶプレゼント。
本当に、間抜けすぎる。
大体、彼女のプレゼントくらい自分で選んだらいいのに。
そう思っても口にできないのは、そんな理由でもないとこうして二人っきりで出かけられないから。
情けないけれど、それが本心。