毒舌に惑わされて
材料があったとしても、豪華な料理を並べられる自信なんてないけど、一応野菜室から捜索したトマトも切って並べた。


「うん、これふっくら焼けていてうまいじゃん。莉乃にしては上出来だな」


いちいち一言多いけど、美味しそうに食べてくれるのが嬉しくて頬が緩む。


「おい。何笑っているんだよ?気味悪いな」


「だって、聖也とこんな風に朝ご飯を食べることになるなんて、思わなかったんだもの」


昨夜は仕事の疲れを癒やすために『fantasy』に行った。アルコールと楽しい会話のおかげで良い感じにストレス発散も出来て、満足した。

だから、それ以上の満足なんて期待もしていなかったのに、聖也に満足させられてしまった。


「そうか? 俺はこうなるって、安易に予測出来たけど」


湯気が立ち上るコーヒーを飲む聖也はどことなく爽やかに見える。こんなに爽やかな印象だったかな。

向かい合って食べるのに聖也には不自然な動作が1つもない。


「莉乃?なんか動きがおかしいけど?」
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