毒舌に惑わされて
最悪な偶然
月末は仕事が忙しくて、残業になることが多い。終わった人から帰って行く。

気付くとあと数人しか残っていない。最後にならないようにしたい。

それにしても、お腹空いたな。


「はい。どうぞ」


お腹が鳴りそうだと思った時、タイミング良くキーボードの横に良い香りがする物が割り箸と一緒に置かれた。


「給湯室にあった春雨スープです。食べましょうよ」


「野村くん、ありがとう」


声を掛けてきたのは、同じ部署で３つ下の野村晴人（のむらはると）くんだった。野村くんは私の隣のデスクに座り、同じ春雨スープを食べた。


「安藤さん、あとどのくらいで終わりそうですか？」


このフロアにはもう私と野村くんしか残っていなかった。


「んー、あと40分くらいかな？」


「俺もそのくらいです。あと少し頑張りましょうね」


先に食べ終わった野村くんは近くにあったゴミ箱にカップを捨てて、自分のデスクに戻る。１人で残るのは嫌だから、私も急いで食べて仕事を再開させる。
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