毒舌に惑わされて
自分のプライベートをさらけ出すような気がして……失態を見せないように気を付けよう。


野村くんが先にドアを開けて、先に『fantasy』へ入る。


「いらっしゃいます!お二人様ですか?」


元気の良いマスターの声が聞こえる。マスターはきっとまだ私の存在に気付いていないようだ。


「あれー? 莉乃じゃないのー?」


「えっ? わー、葉月!」


野村くんの後ろから顔を出して、カウンター席見ると葉月がいた。

それと、葉月の隣りにはまたもや不機嫌な顔した聖也がいる。この姉弟に会うとは……。


「安藤さん、お知り合いですか?」


野村くんが私と葉月を交互に見る。


「ああ、うん。友だちなの。あっちのテーブルに行こうか? マスター、あっちに座るね。葉月、またね」


マスターに一応断りを入れてから窓際のテーブルへと向かう。


「おい…」


野村くんの後を追うようにカウンター席の後ろを通過する時、低い声に呼び止められる。

呼び止めた声の主である聖也に顔を向けた。
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