毒舌に惑わされて
野村くんと一緒にカウンター席に目を向けた。マスターも交えて、3人で楽しそうに話している。


聖也が私たちの視線に気付いて、睨んできた。何で睨むのよ……。普通は手を上げて、挨拶するものじゃない?


ああいう男はどんな女を彼女にするのかしら。

…って、何で聖也のことを考えているのだか!

今は野村くんと話しているのだから、そっちを見ないと。


「あれ? 野村くんって、確か彼女いるよね? それなのに私を口説くなんて、からかっているの?」


告白されて断った数ヶ月後、同い年の彼女が出来たと聞いていた。


「ああ、彼女とは別れましたよ」


「えっ? 何で? まだそんなに長く付き合っていないよね?」


自分の中にある野村くんの彼女情報を思い出せる限りに思い出す。

「実は二股かけられていたんですよ。俺、惨めですよね…」


「ええっ? そうなの?」


全然知らなかったから、驚きだ。それに別れた理由が二股だなんて、かわいそうに。
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