毒舌に惑わされて
「だからと言って、人の話を盗み聞き?」


「人聞き悪いこと言うなって。デカい声で力説しているから聞こえたんだよ」


「いいから、それ持って早くあっちに行きなさいよ」


ニヤニヤと嫌な顔で笑ってこっちの様子を見ている葉月の方へと追い払う。


「ごめんね、中断しちゃって」


聖也のせいで野村くんの切ない話が中断されてしまった。私が悪いのではないけど、うなだれる野村くんを見ると謝ってしまう。


「俺は大丈夫です! 安藤さんが謝ることではないです。でも、新しい恋を安藤さんとしたいと思っているんですけど」


「あたしと?」


「はい! 出来れば結婚前提で付き合って欲しいのですが、どうですか?」


結婚という言葉に心は大きく揺れる。

30才にもなれば結婚は現実問題であり、早く結婚して子供を産みたいと思う女は少なくないはず。

私だって、例外ではない。

「でも、結婚と言われてもね、お互いに知らない部分もいろいろあるだろうし」
< 53 / 172 >

この作品をシェア

pagetop