毒舌に惑わされて
結婚という言葉に大きく揺れ動いた気持ちを抑えて、冷静に答えてみる。

うん、それが大人の女というものだ。


「じゃあ、これから知ってください。とりあえず付き合いましょうよ!」


野村くんは私の手を取り、ギュッと握る。そんな真剣な顔をされても…困りますって。


「で、でもね。結婚前提となるとね、あたしもどう答えていいか……あのね、付き合いたいと言われてもね……えっとね…」


断る言葉が分からなくなり、しどろもどろになってしまう。


「安藤さん!」


「はい!」


手を握られたまま、真剣な声で呼ばれて真剣に返事をする。


「ははっ、そんなに構えなくてもいいですよ。返事は待ちますので、まずは俺を観察してください」


「観察?」


私はキョトンと首を傾げた。


「ほんと、安藤さん。その仕草、かわいいからやめてください。気持ちが抑えられなくなりますから」


野村くんは少し頬を赤くして私から視線を逸らす。
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