毒舌に惑わされて
聖也が意地悪く笑い、マスターは楽しそうに笑う。一体この二人は何を考えているの……。

そんな二人に警戒していたはずなのに、私はまたやってしまった、


「あーあ、やっぱり酔っちゃったじゃないのよ。莉乃、大丈夫?」


「んー、らいじょうぶらよ。ちゃんと帰れるってばー」


葉月の言っていることはちゃんと理解出来るし、意識もしっかりしていると思うのだけど、上手く喋れないし、上手く歩けない。


上手く歩くどころか上手く立てない。


「いいよ。俺が送っていくから」


呆れた声の聖也に支えられる。


「イーヤーだー。聖也なんかと一緒に帰らなーい。ひとりでへーき」


「そんな状態で1人で帰れるわけないだろ。ほら、行くぞ。しっかりつかまれよ」


「ヤーダ!つかまらないもん」


聖也の手から離れようともがいた。


「じゃあ、勝手にしろよ」


聖也が分かってくれたらしく私を離したけど…


「ワッ…、キャッ…、えっ…」


思っているよりも支えがないと立つことさえも出来ないことに気付かされ、転ぶ…!と思った瞬間、聖也に抱きかかえられてしまう。
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