毒舌に惑わされて
「そうそう、さっきの映画なんだけど、女の人はああいうエッチなシーンをどう思って見ているの?」


突然、ものすごく答えにくい質問をされる。一瞬、焦ったけど、大人な感想を述べようとフル回転で頭を動かす。


「んー、そうね。きれいなシーンだと思った。仕草とか表情とか同じ女として、参考になるなーと」


こんな感想で良いかしら?

大倉くんが見る目がどことなく鋭くて、学校で問題を出されたような気分になる。教師が職業と分かってから、どうしてもそこに繋げてしまいがちだ。


「なるほど。やっぱり男と見るとこが違うね」


「大倉くんはどんな風に?」


「俺は単純に色っぽいなー。こんなエッチしたいなーと思ってた。ハハッ」


本当に単純な感想で笑える。でも、男なんてほとんどがそんなものだろう。弾む会話を楽しんでいると、とある美術館に到着した。


「莉乃ちゃん、絵に興味はある?」


「書くのは苦手だけど、見るのは好きかな」


「実は、知り合いから出展しているから見にきてと言われていてさ。ちょっと付き合ってもらっちゃったんだけど。なんか美術館って、大人デートっぽい感じしない?」
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