毒舌に惑わされて
佐久間聖也…朝まで一緒にいた男だ。別れてから半日も経っていない。

私は聖也と目を合わせないように気をつけた。


「聖也もよく来てくれたな。ありがとう。ほら、もう見たヤツは早く帰って。お前ら、うるさいから」


「せっかく来てやったのに、酷い対応だな」


「はい、はい。わざわざ来てくれてありがとうございました。後で合流するから、よろしく」


和樹という人が集団を帰らせたけど、残った私たちには気まずい空気が流れる。


「祥司の彼女さん、うるさくてごめんね。どうぞゆっくり見ていって。あ、聖也もな。お前は1人?」


「1人で悪いですね」


「お前なら、一緒に連れてくる女の1人や2人くらいいるだろ?」


聖也はそんなにモテる男なのだろうか? 顔はいいけど、性格は悪いのに。


「連れてくる女なんて、いないですよ。朝まで一緒にいた女ならいますけどねー」


私をチラッと見て、微かに笑う。

私は目で、言うな!と抗議した。

そんな私の抗議が通じたのかは分からないけど、聖也は先に中へと入っていった。

私は大倉くんに手を引かれて、1つ1つゆっくりと見て回った。
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