時猫




…何だか可哀想になってくるのは何故だろう。


「…まだですか?」

「うんまだ」

「……何をやってるんですか?」

「ん?準備」


本当に、椿は準備をしているだけだった。

女の準備は時間がかかる…とはこういう事か、と沖田は納得する。

が、


「準備出来たよ。ごめんね」


こうやって素直に謝ってくる椿を見て、沖田は許してしまう。


「じゃあ…。行きましょうか」


浅葱色の羽織は着ないで、二人は外に出た。

寒い空気が出迎える。

太陽が雪を照らしていて、眩しい。

目を細めながら、道を歩いた。

朝である為、人通りも多い。



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