時猫
番外編 -君を想う-
【番外編 -君を想う-】
「……近藤さんからのお便りは、来ていませんか?」
「いいえ、来ていませんよ」
沖田は布団の上で横になったまま、深くため息をついた。
戊辰戦争勃発。
自分は”労咳“という病にかかり、新選組として行動する事が出来ない。
ここは江戸だ。
沖田は、「体をゆっくり休めて、元気になったらまた戻ってこい」と土方や近藤に言われて、療養していたのだが…。
「治りませんよね、私の病は」
それは、自分の体だからこそ分かる事。
刀を握れない。
起き上がる事すら出来ない。
どれだけ、自分の体を憎んだ事だろう。
こんな体でなければ、ずっと新選組一番組長として、生きる事が出来たのに…。
だけど、早く死にたい、とは思わなかった。
近藤や土方のお陰でもあるだろう。
しかしやっぱり、脳裏には、あの人が浮かぶ。
「…椿さん」