時猫
「…分かったわ」
そう返事をした途端、近藤は椿に向き直った。
「そうだ、俺の名を言ってなかった。俺は、新撰組局長の近藤勇だ」
「如月椿です」
しかし、自己紹介をした椿を見て、近藤は“そういえば”と首をかしげる。
「どういう事だ、歳。何だ、“新選組の中にいる長州の間者”とは?」
「…急に言われても、俺ら分かんねえぞ」
原田たちも、揃って首をかしげた。
そうだった。
この事は、まだ土方と沖田の二人にしか言っていない。
無口な男は、わずかに眉をひそめていた。
「お前らには、後で詳しく話す。…斎藤」
土方が、ずっと何も話さない、無口な男に視線を向ける。
「何ですか」
「如月を空いてる部屋に連れていけ」
「分かりました。…行くぞ、女」