時猫




「…っ」


立ち上がろうとしても、力が入らない。

仕方なく、土の上で手を握りしめた。

…悔しくて、また涙が出た。

こんな気持ちとは裏腹に、空に輝く星は、きっと綺麗なのであろう。

そんな時…。

一つ、人影が椿の前に現れる。


「おうい…。おまん、大丈夫かえ?」

「…!」


パッと顔を上げると、知らない男の人が心配そうに椿の前に立っていた。

しかし男は、椿の顔を見るなり、驚いた顔をする。


「……泣いてるんか?」

「あ…。貴方には、関係ない…」


こう、親切にしてくれた人に対しても、そっけない態度を取ってしまう自分にムカつき、椿は唇を噛む。

男はゆっくりと、椿の隣にしゃがみこんだ。





< 98 / 214 >

この作品をシェア

pagetop