花言葉が紡ぐ恋~大人の恋愛編~
「本当は跡取りなんて嫌だ」
「うん」
「いくら本妻との間に男子が産まれなかったからって、何で俺なんだ。
娘に婿とらせればいいだろ」
「うん」
「なぁ思織(しおり)、俺まだ死にたくねぇ。
普通に大学卒業して、大好きな花に関わる仕事について、結婚して、たくさん子供つくって、老いて、子供と孫に見守られて死にたい」
「……うん」
きつく抱きついて、子供に返ったようにしゃくりあげながら泣く彼の頭を撫でて相づちをうつし出来ない事が悔しい。
どれ位そうしてたか、泣き止んだ彼に、それでも頭を撫でる手を止めずにいる私に、彼はポツリと呟いた。
「俺に溺れさせるつもりだったのに、俺がお前の愛に酔わされたな」
「え?」
私の腕を掴み、私の下から上に身体を入れ替えた三島さんは、私の胸に顔を埋めて、この半日では聞いたことの無い穏やかな声を出した。
「こういうのを【愛】って言うんだろうな。凄く温かい…」
「三島さん?」
段々小さくなって、最後には寝息に変わった声に苦笑して、私も緩やかに手招きする睡魔に抗わずに眠りについた。