もしも、Ver.1
こんなことなら早めに来りゃよかった。
ジロリと時計を睨む。
…まだかよ。早くしろよ。
そう思っても時間が早まってくれるわけがなく。
稽古も早めに進んでくれるわけもなく。
結局、時計を睨むしかなかった。
「じゃあ、一旦休憩入れます。
ちゃんと水分補給してねー。」
やっと来た休憩の時間。
俺はその声を聞くと同時に携帯を持ち、尚樹達に気づかれない程度に早歩きをして隣の教室に行った。(あくまで、気付かれないようにだからな。)
……うわ。
なんか、緊張すんな。
前に撮影現場からかけた時も思ったけど、やっぱり奈々美に電話すんのは苦手だ。
------------プルルルル、プルルルル
何回かのコールの後に音が途切れた。
「…はい?」
あ、奈々美だ。
なんて当たり前の事を思う。
声、ダルそうだな。
「おう。」
……って何か他にあんだろ!俺!
毎度ながら、自分の会話能力の、なさに呆れる。
「…優斗?」
風邪で弱ってるんだかなんだか知らんが。
可愛すぎんだろ!
くそー。甘えたような声出すなよなぁ。
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